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比叡山の高僧から生まれた、京都の名菓。「満月」の阿闍梨餅が170年愛され続ける理由。


阿闍梨餅(あじゃりもち)」という言葉を、耳にしたことはありますか?

京都に行ったことがある方なら、きっとどこかで見かけたことがあるはず。新幹線の改札を抜けて、お土産屋さんの棚に並ぶあの茶色い包みを。あるいは百貨店の地下食品売り場で、長い行列が伸びているのを目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

でも、「名前は聞いたことあるけど、まだ食べたことがない」という方にも、「もう何度も食べているよ!」というファンの方にも、今日はぜひこのまま読み進めていただきたいと思っています。

なぜなら、阿闍梨餅を作っているお店「満月(まんげつ)」には、そのお菓子の美味しさだけじゃなく、170年近くにわたって受け継がれてきた、深くて温かいものがたりがあるから。

知れば知るほど、もっと好きになる。そんなお店です。


安政三年、1856年。ひとりの職人が出町橋のほとりに店を開いた

まずは、「満月」という店そのものについてお話しさせてください。

創業は、1856年(安政3年)。賀茂川にかかる出町橋の東のたもとに、初代が菓子舗を構えたのがはじまりです。

安政三年、ですよ。幕末も幕末、ペリーが来航してわずか3年後のことです。その時代から続いているお店が、今も京都の街に暖簾をかかげているなんて、ちょっと胸が震えますよね。

ただ、創業当初から順風満帆だったわけではありません。幕末の争乱を避けて、いったん郷里に引き上げた後、明治初年に再び出町柳で出店しました。幕末という激動の時代の波をくぐり抜けて、それでも京の地に戻り、お菓子づくりを続けた。その執念とも言うべき職人の心意気に、じんとしてしまいます。

さらにその後も、戦時中の強制疎開で現在地に移り、今日まで暖簾を守り続けております。

幕末の動乱、明治の夜明け、戦争という試練——。幾度もの時代の嵐を乗り越えながら、「満月」はずっとそこにあり続けました。そしてその後を受け継ぐように、大正の時代に登場したのが、あの「阿闍梨餅」です。


「阿闍梨」って、いったい何? その名前に込められた深い意味

「阿闍梨餅」という名前、はじめて見たとき「なんて読むんだろう?」と思った方、きっと多いですよね。「あじゃりもち」と読むんですが、この「阿闍梨(あじゃり)」というのがとても興味深い言葉なんです。

阿闍梨(あじゃり)」とはもともと仏教用語で高僧を意味しています。サンスクリット語の「アーチャリー」を漢字の当て字にしたものです。

日本では天台宗・真言宗において、厳しい修行を積んだ高い位の僧侶のことを指します。そして、この「阿闍梨」との縁がどこから生まれたかというと——比叡山なんです。

比叡山延暦寺に平安時代から伝わる難行で、風雨の日も定まった千日を決まったコースの勤めを終えなければならない「千日回峰行」。その満行者は大阿闍梨と尊称され、京都の大廻りでは多くの信者が「阿闍梨さん」と拝み加持を受ける。

「千日回峰行」——千日間、比叡山中の霊場を歩き続けるという想像を絶する修行です。雨の日も、風の日も、雪の日も。一日も欠かすことができない。その厳しさは、想像を超えるものがあります。

そして、この阿闍梨様たちが過酷な修行の合間に口にして飢えをしのいだのが「餅」だったという言い伝えがあります。そのことにちなんで考案されたのが、この「阿闍梨餅」なのです。

さらに、中央が盛り上がった独特の形は、天台宗の総本山・比叡山延暦寺で厳しい修行を重ね、徳を積んだ僧侶「阿闍梨」様が頭にかぶる網代(あじろ)笠がモチーフです。

丸くて、中心がふっくらと盛り上がった形。それは、阿闍梨様の網代笠をかたどったもの。お菓子のひとつひとつに、比叡山での祈りと修行の歴史が宿っているなんて、なんとも奥深いと思いませんか?

知った上で食べると、また味わいが違って感じられますよね。


大正時代に二代目が生み出した、100年を超えるロングセラー

名物・阿闍梨餅は大正期に2代目が開発したもので、砂糖や卵が贅沢品だった当時から90年以上を経た現代まで、長くに渡って京都人に愛されてきました。

砂糖や卵が「贅沢品」だった大正時代に、それらをふんだんに使ってつくられた阿闍梨餅。当時としては、かなり特別なお菓子だったはずです。それが今日まで100年以上の時を経て、なお愛され続けているというのは、本物の証拠だと思います。

では、実際にどんなお菓子なのでしょう?

餅粉をベースにして、卵などさまざまな素材を練り合わせた生地に、丹波大納言小豆の粒餡を包んで焼いた半生菓子です。しっとりとした皮とあっさり風味の餡が見事に調和した逸品です。

「半生菓子」というジャンルに属するお菓子です。生菓子でも、完全に乾いた干菓子でもない、その中間。しっとりとした独特の食感を保つことができる、職人にとって難しいカテゴリのひとつでもあります。

餅粉(もちこ)をベースにした生地。そこに卵が加わることで、あのもちもちとした弾力が生まれます。そして包まれているのが、丹波大納言小豆の粒餡。丹波大納言といえば、日本を代表する高級小豆のひとつ。その粒の美しさ、ほどよい甘さ、そして皮のやわらかさは、他の小豆とは一線を画します。

手に持つと、ずっしりとした重さがある。かぶりつくと、皮がもちっと弾けて、あふれ出るような粒餡が口いっぱいに広がる。甘いけれど、くどくない。食べ終わった後、また食べたくなる——。

そういうお菓子なんです、阿闍梨餅って。


「一種類の餡で、一種類の菓子しかつくらない」という、信念の話

ここで、「満月」というお店の根っこにある哲学についてお話ししなければなりません。

これが本当に、素晴らしいと思うんです。

「一種類の餡で一種類の菓子しかつくらない」という基本方針があります。一つひとつの菓子は、職人のあらゆるノウハウが注ぎ込まれた作品であり、餡は、ただ一種類の菓子のために素材を選択し、味付けや加工法まで考え抜いて開発されるものだからです。

これだけ聞くと「当たり前のことじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。でも、少し考えてみてください。

普通のお菓子屋さんなら、同じ小豆の餡を複数のお菓子に使い回すことだって珍しくありません。むしろ、それが効率的な経営というもの。でも「満月」は違う。そのお菓子のためだけに、その餡をゼロから考える。小豆の品種選び、炊き方、粒の残し方——すべてをそのお菓子に合わせて設計する。だから、4種類のお菓子には、4種類の異なる餡が使われているということになります。

「ここにAとBという2つのお菓子があるとします。餡はお菓子の命なので、もし中身の餡が同じならお菓子も同じものになると思っています。まず小豆は何を選ぶか、どういう炊き方をするか、粒餡にするのか、こし餡にするのか、粒餡だったらどれくらい粒を残すのか。そういったことから考えていかなければなりません。『1種類の餡では1種類のお菓子しか作らない』。だから今も、お菓子は4種類しか作っていない理由はそこなんです」と、5代目当主・西浦裕己さんは語っています。

この言葉、胸に刺さりませんか。

多くのものを出して「選ばせる」のではなく、少ないものを深く突き詰めて「最高のものだけを届ける」。そういうものづくりへの覚悟と誇りが、この一言に凝縮されていると思います。


職人の手が生み出す、あの独特の食感の秘密

「しっとりした皮」というのが、阿闍梨餅の大きな特徴のひとつですよね。あのしっとり感、どうやって生まれているのか、気になったことはありませんか?

阿闍梨餅の生地作りは工程が分かれていて、同じ職人が一から十まで手がけているわけではありません。生地を寝かせて少しなじませ、また焼く直前に空気や水を含ませて。それぞれの工程の職人は、経験から加える水の配合や回数などを微妙に変えていかないといけない。それで味わいや食感が変わってしまうんです。

職人が感覚で調整しながら、工程ごとにバトンを渡していく。それが阿闍梨餅です。

さらに5代目の西浦さんはこう付け加えます。「人の手によって生まれるお菓子ですが、私たちは菓子舗なので、1週間前に食べた阿闍梨餅と今日食べたものの味や食感が違っていてはダメなんです」と。

これ、本当に難しいことなんです。人間の感覚に頼りながらも、一定の品質を維持し続けるということ。たとえ熟練の職人でも、体調、湿度、気温——あらゆる条件が変わる中で、毎日同じクオリティのものをつくり続けることは、容易ではありません。

だからこそ「満月」は、品質を一定に保つために、どこよりも早く機械化を進めたという面も持ち合わせています。機械化を「職人の否定」ではなく、「品質の担保」として活用する。その柔軟な判断もまた、長く愛され続ける理由のひとつだと思います。

また、使用する素材へのこだわりも徹底しています。「阿闍梨餅に使う小豆は、大き過ぎても小さ過ぎてもいけません。大きいとつぶれにくく、小さいと皮が多くなりすぎてしまいますから。また、機械化が進んだ今も小豆洗いは必ず職人の手で行います。けっこうな量ですし冬は特に厳しい作業ですが、素材に触れて培われる職人の感覚がきっとあると思うのです」とのこと。

小豆洗いを職人が手作業で行う理由——それは「数値化できない感覚を育てるため」なんですね。そういう話を聞くと、ひとつのお菓子がどれだけの手間と心意気の上に成り立っているか、改めて感じさせられます。


もうひとつの看板菓子「満月」の、知られざる物語

ここで少し、同店のもうひとつの名菓についてもお話ししたいと思います。

お店の名前と同じ「満月(まんげつ)」というお菓子のことです。

「満月」は1900年(明治33年)、旧九條公爵家のオーダーにより誕生しました。月を思わせる意匠から旧九條公爵家が命名したと伝わります。

九条家といえば、藤原氏の嫡流にあたる五摂家のひとつ。そんな高貴な家から「つくってほしい」とオーダーを受けたお菓子が、この「満月」です。当時はまだ珍しかった洋菓子の手法も取り入れて誕生した菓子で、まん丸の姿がまさに「名月」を賞でているようだとして九条家から「満月」と命名されたそうです。

白くて、まんまるで、その名のとおり夜空の月のような存在感があります。

最上級白小豆のみを使用したコクのあるこしあんを、洋菓子風の生地でくるんだソフトな食感の焼菓子です。白小豆は、混ぜすぎると粘りが出てしまい、火加減に気を配っておかないとたちまち美しい白色が損なわれてしまう難しい素材。職人の勘と技が欠かせない逸品です。

ところが、この「満月」は戦後、しばらく製造が途絶えてしまいます。先代は一つのお菓子に集中しようという考えから満月の製造をやめてしまいました。満月には白小豆を使っていることから高価な上に手間もかかり、当時阿闍梨餅の出荷も増えてきたこともあり、手が回らなくなったのです。

そして5代目の西浦裕己さんが跡を継いだとき、「やっぱり満月は屋号にもなっているので、たとえ売れなくても店に置いておかないといけない」と思い、製造を再開しました。幸いにも満月を知る職人がまだいて、割帳(レシピ)も残っていたおかげで作ることができました。

ただ、再現の道はけっして平坦ではありませんでした。最初に作った試作品がまったくおいしくなくて…。結局、販売できるようになるまでに1年半くらいかかりました。生地の混ぜ具合とかコネ具合、焼き時間などをああでもない、こうでもないといいながら調整して、やっと満足いくものができたのが25年ほど前のことです。

1年半。試行錯誤を繰り返して、ようやく「これだ」というものができあがった。その粘り強さと、屋号を守ることへの誇りに、じわじわと感動が押し寄せてきます。

現在この「満月」は、土・日・祝日のみの販売で、販売店舗も本店と金閣寺店のみの限定商品です。贈答用にも人気が高く、販売日は比較的早い時間帯に売り切れになってしまうため、購入を希望される際は午前中にお店に足を運ぶか、あらかじめ予約をしておくことをおすすめします。

価格は1個303円。予約は1個からOKです。週末の限定品、ぜひいつか手に入れてみてください。


4種類の菓子、それぞれの個性を知ってほしい

「満月」では阿闍梨餅と「満月」のほかに、「京納言」と「最中」も販売されています。せっかくなので、4種すべてをご紹介させてください。

① 阿闍梨餅(あじゃりもち)

言わずと知れた看板銘菓。餅粉と卵を合わせた生地に丹波大納言の粒餡を包んで焼いた半生菓子です。手のひらにのせると少し温かく、表面はほんのりしっとり、かじると弾力のある皮が餡を包み込んでいます。価格はひとつ141円とリーズナブルで、1個からでも購入できます。

② 満月(まんげつ)

先ほど詳しくご紹介した、屋号と同じ名前のお菓子。白くてまるまるとした姿は、まさに夜空の満月そのもの。希少な最上級白小豆のこし餡を洋菓子風の生地で包んだ焼き菓子で、土日祝日限定・本店と金閣寺店のみの販売です。1個303円。

③ 京納言(きょうなごん)

蜜漬けにした大納言小豆をこし餡と寒天でつないだ棹物菓子(さおものがし)です。寒天のつるんとした口当たりと大納言小豆のもつ素材本来の風味を味わうことができます。夏には冷蔵庫で冷やして味わうこともおすすめです。棹物とは、長方形の型に流し込んで固めたお菓子のこと。切り分けて食べる上品さも魅力のひとつです。

④ 最中(もなか)

一粒選りの丹波大納言小豆を丁寧に炊き上げた粒餡を、サクサクの香ばしいもなか種でサンドしています。阿闍梨餅は皮と餡の調和を考えて粒を半分ほど残すのに対し、最中には大粒の小豆を使い、粒をしっかり残すように炊き上げています。同じ丹波大納言でも、お菓子によって炊き方を変えている——まさに「一種類の餡で一種類の菓子」の哲学が息づいています。


もうひとつのこだわり——「値段を上げない」という老舗の矜持

「満月」には、もうひとつ大切にしていることがあります。それは品質と価格についての考え方です。

「材料の質を落とさず、値段は極力上げないよう努める」というモットーがあります。納得できる商品をつくり、納得できる価格で販売することも、京都の老舗の心意気であると思っております。

阿闍梨餅が1個141円という価格は、その品質を考えると驚くほどリーズナブルですよね。丹波大納言という高級小豆を使い、職人が手間をかけて作り、それでもこの価格を守り続けている。

ここまで全国的に人気になったのは味はもちろんですが、手頃な価格から京都観光の手土産に重宝され、少しずつ知名度を上げていったことが容易に想像できます。

高いものを少数の人にだけ届けるのではなく、できるだけ多くの人にこの味を届けたい——。そういう思いが、この価格の背景にあるように感じます。老舗の高級店にありがちな「敷居の高さ」をあえて取り除いている。それが「満月」の優しさだと、私は思っています。


本店への行き方と、訪れたときのお楽しみ

京都を旅するなら、ぜひ本店にも足を運んでみてください。百貨店や駅の売り場でも購入できますが、本店ならではの体験があるんです。

京阪電車の出町柳駅から東へ歩いて8分ほど。風格漂う町家造りの建物が「阿闍梨餅本舗 満月」の本店です。

住所は京都府京都市左京区鞠小路通今出川上ル。百万遍の交差点からすぐのエリアです。京都大学のそばで、学生と観光客と地元の方が入り混じるにぎやかな地域。それでも本店のたたずまいには、どこかひっそりとした品があります。

慣れた様子の常連さんらしき人、法衣をまとったお坊さんらしき人、スマートフォンを握りしめてどことなく緊張した面持ちの人まで、お客さんが次々とのれんをくぐっていきます。

このシーンを想像するだけで、好きになりませんか。常連さんが気軽にふらっと立ち寄り、お坊さんがお土産に買い求め、観光客がはじめての一個にわくわくする——。そういう景色が、何十年も変わらずにここにある。

そして本店で買うとき、ぜひ意識していただきたいことがあります。本店で阿闍梨餅を買うと袋が蒸気でぷっくり膨れていて、手の平にのせるとほんのりあたたかい。そう、できたてが買えるんです。

焼きたての阿闍梨餅は、表面がさっくりして、餡もとろりとなめらか。少し固くなったものをレンジで温めたものとは、また違う次元の美味しさです。できれば、まずは本店で焼きたてをひとつ、その場でほおばってみてください。

玄関横の床几(しょうぎ)に座ってひとつ頬張ってみるのがおすすめです。

お店の中には吹き抜けの店内にお琴のBGMが心地よく響くという雰囲気もあり、そこでいただく阿闍梨餅は、きっと格別のはず。

営業時間は9:00〜18:00、定休日は水曜日(不定休)です。


京都に行けない方へ——それでも手に入れる方法

「京都まではなかなか行けないよ」という方も、大丈夫です。

京都駅では京都駅構内のギフトキヨスク京都、JR京都伊勢丹地下1階、京都ポルタ、近鉄名店街ハーベス京銘館店、京都駅新幹線改札内の京のみやげ店・古都みやび店・舞妓店の計8店舗で購入できます。

新幹線の改札の中でも買えるというのは、帰りの新幹線の中で「あ、やっぱり買えばよかった」と思った方への救済措置のようで、ちょっとほっとしますよね(笑)。

また、東京や大阪、名古屋の百貨店でも時期や催事によって購入できます。東京では三越日本橋店や高島屋日本橋店で買うことができます。

そしてお取り寄せも可能です。楽天市場やAmazonでも販売されていますし、高島屋のオンラインストアでも取り扱いがあります。ただひとつ、注意していただきたいのが賞味期限。賞味期限は製造日含め5日間と比較的短いので、購入後はお早めにお渡しするよう心がけましょう。

これは逆に言うと、「保存料を使っていない」「ちゃんとした素材でつくられている」証拠でもあります。日持ちがしないことを不便に思う前に、そういうお菓子だということを愛してあげてほしいな、と思います。

もし少し固くなってしまったときは、レンジでチンするかトースターでちょっと焼くと少しやわらかくなりますよ。また、冷凍して解凍後にトースターで温め直すという方法も、多くのファンが実践していてとても好評なようです。


阿闍梨餅の食べ方と、相性のいい飲み物

せっかくなので、美味しい食べ方についてもお伝えしますね。

まず、基本はやっぱり「そのまま」食べること。常温のまま、包みを開けてひとくちどうぞ。もっちりした皮の弾力と、粒餡のやさしい甘さを、まずはシンプルに味わってみてください。

あんこの美味しさをダイレクトに楽しめる阿闍梨餅は、日本茶だけでなくコーヒーや紅茶との相性も抜群です。

緑茶と合わせると、これはもう鉄板の組み合わせ。ほどよい渋みが甘さを引き立てて、口の中でハーモニーを奏でます。でも実は、コーヒーとも相性がいいんです。生地の餅感と粒餡の素朴さが、コーヒーの苦みとうまく調和する。「和菓子にコーヒー?」と思う方もいるかもしれませんが、だまされたと思ってぜひ一度試してみてください。

温かいお菓子として楽しみたい場合は、電子レンジで10〜15秒ほど温めるのがおすすめ。皮がじんわりとやわらかくなり、餡もとろりとほどけるような食感になります。これはこれで、また格別の美味しさです。


「満月」を手土産にするということ

最後に、贈り物としての阿闍梨餅についても触れておきたいと思います。

阿闍梨餅は、和菓子好きなら誰もがその美味しさに感動する商品です。京都人から贈り物として長く信頼されてきたことも納得できます。関西以外では知っている人が少ないため、関西以外の人に贈るのが特に良いでしょう。

そうなんです。関西ではすでにおなじみの存在ですが、関東や東北、九州など遠方の方にとっては「これ、何?」という反応から始まることも多い。でもひとくちかじった瞬間に、「美味しい!」が生まれる。そのギャップが、手土産としての魅力でもあります。

1個141円とリーズナブルで、10個入から50個入まで購入できるので、会社の同僚など多数の人にお渡しすることも可能です。

個別包装されているので、配りやすいのも嬉しいポイント。それから、篆書(てんしょ)体で「阿」「闍」「梨」「餅」と書かれた包装紙もとても品があって、受け取った方に「なんか特別なものをもらった」という気持ちを抱かせてくれます。

箱のイラストも要チェックです。都を練り歩く阿闍梨様、阿闍梨様の腰を支えるお付きの人、阿闍梨様が通り過ぎるのを腰を低くしてうやうやしく迎える庶民などの姿が描かれた、ストーリー性のある箱のイラストにも注目です。

そういう細部にまで物語が宿っている。それが「満月」のお菓子です。


おわりに——170年、変わらぬものの尊さ

いかがでしたか?

読んでいただく中で、「満月」というお店と「阿闍梨餅」というお菓子が、少し立体的に見えてきたら嬉しいです。

幕末の出町橋のほとりから始まって、争乱の時代を生き延びて、戦争の疎開を経て、それでも170年近くにわたって京の地で暖簾を守り続けてきた。その歴史の重みは、ひとつのお菓子の中にも確かに宿っていると思います。

「一種類の餡で一種類の菓子しかつくらない」という信念。素材を妥協しない姿勢。それでも価格は極力上げずに、多くの人に届けたいという心意気。

いろんなことが猛スピードで変わっていく今の時代に、こういうものがあるということが、どれだけ心強いことか。

阿闍梨餅を一個手に取るたびに、そういうことを感じてもらえたら、とても嬉しいなと思います。

京都に行く機会があったら、ぜひ左京区の本店まで足を運んでみてください。お琴のBGMが流れる静かな店内で、ほんのり温かい阿闍梨餅をひとつ買って、お店の前の床几に腰かけて食べる。その時間は、きっとあなたの旅の記憶に、やさしく残ってくれると思いますよ。


阿闍梨餅本舗 京菓子司 満月 本店
住所:京都府京都市左京区鞠小路通今出川上ル
営業時間:9:00〜18:00
定休日:水曜日(不定休)
アクセス:京阪電車出町柳駅より徒歩約8分

金閣寺店
住所:京都府京都市北区衣笠御所ノ内町31-1
営業時間:10:00〜17:00
定休日:水曜日

※「満月」(お菓子)は土日祝日のみ、本店・金閣寺店限定販売です。
※賞味期限は製造日含め5日間です。


最後まで読んでくださって、ありがとうございました。 あなたにとって素敵な和菓子との出会いがありますように。

京たび

こんにちは!
京都生まれの京都育ち。
現在も大好きな京都で生活をしています。

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