京都の北野さん(北野天満宮)の門前にある「たわらや」さんの詳細です。地元のもんとして、あそこの「一本うどん」の話をしだしたら、それこそ日が暮れるまで止まらへんかもしれません(笑)
あそこは単なる「変わったうどん屋」でない。京都の歴史そのもの、北野さんの賑わいそのものを吸い込んできた場所なんです。
それじゃあ、お茶でも飲みながら、ゆっくり聞いていっとくれやす。
創業300年超、町家が語る「たわらや」の風格
まず、お店の前に立ったとき、その建物に圧倒されるんと違うかな。あの建物、築400年近いって言われてますよ。江戸時代どころか、安土桃山から江戸に変わるくらいの頃からそこにある。そう思うと、柱一本、瓦一枚にまで神様が宿ってるような気がしてきませんか。
創業は享保年間(1716年~1735年)。徳川吉宗公の「享保の改革」の頃。
その頃から、北野天満宮へお参りに来る人たちの胃袋を満たしてきたわけですね。
京都には「俵屋(たわらや)」っていう名前の有名な旅館もありますけど、あちらさんとはまた別。こっちは庶民の、というても歴史の重みが違う「おうどん屋さん」ですね。店内に一歩入ると、ひんやりとした京町家特有の空気があって、奥には中庭が見える。あの静けさが、外の今出川通の喧騒を忘れさせてくれますね。

伝説の「一本うどん」は、なぜ一本なのか?
さて、肝心のおうどんの話。メニューには「たわらやうどん」って書いてある。これが世に言う「一本うどん」ですね。
「なんで一本なん?」ってよう聞かれる。実はこれ、縁起物なんです。 「太く、長く、粘り強く」 まさに、北野さんに合格祈願に来る受験生や、健康長寿を願うお年寄りにぴったりの願いが込められてる。
昔は文字通り「一本」やったらしいんやけど、今は食べやすさを考えて「二本」になってることが多い。それでも、その一本が普通のうどんの何倍あるんやっていうくらいの太さ。親指くらいの太さがあるんよ。
これを茹で上げるのに、どれくらい時間がかかると思います?
なんと、1時間近くじっくり、じっくり茹でるんですね。 普通のおうどんならドロドロに溶けてしまうところやけど、そこは秘伝の打ち方があるんでしょうね。表面はつるんとしてるのに、中心までしっかり熱が通って、まるでお餅のような、団子のような、独特のコシと弾力がある。
黄金色の出汁と、生姜の魔法
運ばれてきた「たわらやうどん」を初めて見る人は、みんな絶句しはりますね。
「……これだけ?」って。 鉢の中には、太い麺がとぐろを巻いて、透き通ったお出汁に浸かってる。具は何もない。ただ、別添えで「すりおろした土生姜」がたっぷり付いてくる。
「これが、京都の引き算の美学なんや。」
まずはお出汁を一口飲んでみてください。昆布と鰹の旨みがしっかり効いた、雑味のない、いわゆる「京出汁」ですね。これが五臓六腑に染み渡る。 そこに、生姜を溶く。すると、お出汁の輪郭がパキッと際立って、喉を通るたびに体がポカポカしてくる。冬の寒い時期、北野さんの「天神さん(25日の縁日)」で冷え切った体に、この生姜の効いたお出汁がどれだけありがたいか。
麺を持ち上げようとすると、その重さに驚くはずや。箸がしなる。 「すする」なんて芸当は無理やから、端っこから少しずつ「噛み締める」。噛むほどに小麦の甘みがじわじわ出てきて、そこにお出汁が絡む。
戦後の空白と、復活のドラマ
実は、この「一本うどん」、一時期姿を消してたことがあったんです。
戦中・戦後の食糧難で、良質な小麦粉が手に入らなくなった。中途半端な材料で名物を出すわけにはいかんと、お店を一度閉めはりました。
それが復活したのは、1990年代。
15代目のご主人が「先祖代々の味を途絶えさせてはいけない」と、一念発起。古い資料を紐解き、記憶をたどり、試行錯誤を繰り返して、あの「極太麺」を再現しはりました。
地元民としては、あの味が戻ってきたときは本当に嬉しかった。
北野さんの門前に、あの看板がないと寂しいもんですから。
通が教える、お楽しみメニュー
「一本うどん」だけやない。たわらやさんの魅力を紹介。
- 衣笠丼(きぬがさどん):
京都の定番、刻んだお揚げさんとネギを卵でとじた丼。一本うどんとのセットにする人が多いんやけど、これがまた相性抜群。お揚げに染み込んだ甘辛いお出汁が、うどんの繊細なお出汁とええ対比になります。 - 季節の甘味:
実はここ、甘味処としても優秀なんです。夏はかき氷、冬はぜんざい。特に夏場、北野さんをお参りして汗だくになった後に食べる、あの静かな町家でのかき氷は格別ですよ。

北野天満宮と「たわらや」のある風景
地元の人間にとって、たわらやさんへ行くのは単なる外食やない。 毎月25日の「天神さん」の縁日。朝から境内を回って、古い骨董品やら着物やらを見て歩く。歩き疲れて、ちょっとお腹が空いた頃に、たわらやさんの暖簾をくぐる。
あそこの格子戸越しに見える今出川通の景色は、江戸時代の人も同じように見てたんかな、なんて考えるのも乙なもんですね。 最近は観光のお客さんも多いけど、お店の人はいつも変わらず、静かに、丁寧にもてなしてくれはります。

最後に:あなたが訪れるときのために
もし、これから「たわらや」さんに行こうと思わはるなら、これだけは気をつけてくださいね。
- 早めに行くこと:
一本うどんは、茹でるのに時間がかかるし、数に限りがある。特に行楽シーズンや25日の縁日は、お昼過ぎには「売り切れ」の札が出てしまうことも珍しくない。 - ゆっくり味わうこと:
「立ち食いそば」の感覚でなく、あの重厚な建物と一時間かけて茹でられたうどんに敬意を払って、ゆっくり、一口ずつ噛み締めてほしいです。
京都には美味しいもんがいっぱいある。華やかな懐石料理もええけど、こういう「一筋の伝統」を頑固に守り続けているお店こそ、京都の本当の底力やと思います。
どうですか、お腹空いてきませんか?
今度、北野さんへお参りに行くときは、ぜひあの暖簾をくぐってみておくれやす。
詳細
- 住所
京都市上京区馬喰町918 - 電話番号
075-463-4974 - 営業時間
11:00~16:00 (ラストオーダー 15:30) - 定休日
不定休 - 交通手段:
- 京都市バス「北野天満宮前」下車すぐ
- 京福電車(嵐電)北野白梅町駅から徒歩7分
- 席数
45席 - 個室
無 - 貸切
可(20人~50人) - 駐車場
無 - その他
- カード不可
- 電子マネー不可
- QRコード決済可
「たわらや」は、北野天満宮の参拝後に立ち寄るのに最適な場所で、歴史的な雰囲気と美味しいうどんを堪能できます。

